なべよこ観察隊「鍋横物語ー見たい 聞きたい 記録したい」中野区・鍋屋横丁

なべよこ観察隊は、鍋横地域協議会の課題別部会である地域センター部会の中の専門部として活動しています。メンバーの多くは青少年の育成活動、町会、PTAなどの地域活動を通して、この活動に興味をもった人たちです。日常の生活の中で、目についた地域の様子、興味を感じたまちの様子をそれぞれ出し合い、実際にまちを歩いて観察しました。

第2章【1】(2)兄ちゃんと通った路 語り部:朝倉春江(昭和2年生)

語り部:朝倉春江(昭和2年生)

語り部:朝倉春江(昭和2年生)

 小学校3年生の頃、宮里37番地(本町4 -24)に引っ越しましたが、それまで通っていた谷戸小学校に2歳年上の「兄ちゃん」といっしょに通学していました。

 通学には青梅街道を通っていきましたが、鍋横交差点近くの「野々山パン屋」の横を通ると、パンの粉で顔中真っ白にした店員さんが「いってらっしゃい」と毎朝声をかけてくれました。

 その当時(昭和10年頃)の青梅街道には市内電車が走っていましたが、荷物は牛や馬が運んでいました。

 

昭和初期の地図

昭和初期の地図

 あるとき、先を行く兄ちゃんを追って鍋横交差点に来ると、止まっていた馬が突然おしっこを始めたのです。蛇口を全開にしたような勢いで、みるみるうちに辺り一面泡が広がっていきました。

 あまりの驚きで立ち尽くす私に「早く渡ってこい、遅刻するぞ」と手招きする兄ちゃんの姿がありました。走って後を追う私に少し怒りながらも、気遣って振り向き振り向き先を行くやさしい兄ちゃんは終戦の前年に戦死してしまいました。

 その兄ちゃんの思い出と重なって、今も忘れられない出来事となっています。